チュートリアルコース

チュートリアルコース

本コースについて

好評を得ているチュートリアルコースを、本年も討論会に先立ち開催します。
今年度は3名の先生方にレビューして頂く予定です。
学生・若手研究者を主な対象としていますが、一般の方の参加も歓迎します。参加費は無料です。


概要

日時 2016年11月15日(火) 13:30〜17:30(受付13:00〜)
会場 広島国際会議場 ヒマワリ (広島市中区中島町1-5(平和記念公園内))
(受付 ヒマワリ入口前)
講師 池上 貴久 先生 (横浜市立大学)
山田 和彦 先生 (高知大学)
寺尾 武彦 先生 (京都大学名誉教授)

※チュートリアルコースの参加登録は締め切りました。


プログラム

時間 プログラム内容
13:30〜14:30
池上 貴久 先生 (横浜市立大学)
「フーリエ変換を工夫してNMRスペクトルをよみがえらせる」
同じ測定データでも、どのようにフーリエ変換するかによって、スペクトルに大きな違いが生じることがあります。もちろん、プロセス法も考えておいたうえで測定パラメータを設定するのがよいのですが、もし間違えて測定してしまったとしても、フーリエ変換をなんとか工夫することによって、そのミスを少しでもカバーできればそれに越したことはありません。今回はプロセス用パラメータをブラックボックスとして使ってしまっているNMR初心者を対象に、プロセス法における工夫や個々の基本的なパラメータの意味について、できるだけ詳しく紹介したいと思います。
14:50〜15:50
山田 和彦 先生 (高知大学)
「四極子核固体NMR法の基礎の基礎」
ほとんど全ての元素は固有の核スピン(I)を有する安定同位体を含んでいる。従って、原理的には周期表上のほとんどの元素がNMR測定の対象になるはずである。また、その八割程度は四極子核と呼ばれるI ≧ 1の核種であり、四極子モーメントを有している。そのため、周囲の電荷が創出する電場勾配と四極子モーメントの間で、核四極相互作用と呼ばれる静電的な核スピン相互作用が生じる。概して、NMRユーザーは1Hや13CなどI = 1/2の核種を測定対象とすることが多く、四極子核NMRを使用する機会は少ないかもしれない。これは、化学シフト相互作用や双極子−双極子相互作用などに比べて、核四極相互作用は線形に与える影響が大きいため、線幅が広がることを反映した結果と思われる。しかしながら、近年の技術的な進歩に伴って、それら難易度は確実に下がっており、NMR測定が可能な四極子核が増えてきた。そして、NMR法を応用できる研究分野は確実に広がってきている。このような背景から、従来からのNMRユーザーのみならず、これからNMR法を活用する研究者においても、四極子核を測定対象とするNMR法への関心が高まってきている(と思われる)。本講演では、これから四極子核NMRに挑戦するユーザーを対象に、四極子核NMRの基礎的理論やバックグランドを概説し、四極子核の代表格(核?)である酸素(17O)NMRを実例として、スペクトル解析の重要性について説明する。
16:00〜17:30
寺尾 武彦 先生 (京都大学名誉教授)
「NMRを創った人たち:第1話 夜明け前
1. SternとGerlach―偶然はいかに彼らに微笑んだか」
教科書では、長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されている。しかし、学問が創られた背景には、様々な味わい深い物語がある。研究対象の選択や鍵となるアイデアの着想の経緯、あるいは回り道やつまずきなど創造の過程で辿った軌跡を知ることは、学問を創る側に立とうとしている若い人々にとって素晴らしい財産となろう。研究を行なった本人の人物像、研究が行なわれた時代背景、研究環境、周辺の人々などもまた創造の物語を構成する重要な要素である。本講演では、時代を画した研究を行った人物にスポットを当て、可能な限りその研究が行われた現場を蘇らせる。その試みが研究者として歩みだした若い人たちにとって一つの道標になれば幸いである。今回は角運動量の方向量子化を発見し、陽子などの磁気能率を初めて測定してNMRが出現する土壌を培った先人の物語を話す。