チュートリアルコース

チュートリアルコース

本コースについて

好評を得ているチュートリアルコースを、本年も討論会に先立ち開催します。
NMRの歴史から、最近の進歩・動向までを3名の先生方にレビューして頂きます。
学生・若手研究者を主な対象としていますが、一般の方の参加も歓迎します。参加費は無料です。


概要

日時 平成25年11月11日(月)13:00〜18:00
講師 池上 貴久 先生(大阪大学准教授)
梶  弘典 先生(京都大学教授)
寺尾 武彦 先生(京都大学名誉教授)

※チュートリアルコースの参加登録は締め切りました。

▲PAGE TOP


プログラム

時間 プログラム内容
13:00〜14:30
池上 貴久 先生 (大阪大学蛋白質研究所 准教授)
メチル基を通して巨大な分子を観る
たとえTROSY-CRIPTなどの測定法を使っても、蛋白質主鎖のアミド基ではもはや観測できないような大きな分子量を対象とすることに挑戦がなされている。その鍵はメチル基を観ることである。一般的にメチル基は、その軸で速く回転し、さらに3つの1Hスピンの化学シフト値が重なることのために感度が他の基よりも高くなることはよく知られていた。近年、それに加えて交差相関の働きにより、さらに横緩和が遅くなっていることも実証され、Methyl-TROSYの名で知られるようになった。この現象を利用すると、巨大分子どうしの相互作用だけでなく、その側鎖のダイナミクスも分かり、また、必ずしも帰属をしなくても、巨大な蛋白質のアロステリック効果に伴う構造変化なども追うことができるようになった。ここでは、それらの実験例とその原理について紹介したい。
14:45〜16:15
梶 弘典 先生 (京都大学化学研究所 教授)
NMRおよびGIPAW計算を用いた有機EL、有機太陽電池の解析
NMRが、他の解析手法では得ることが困難なユニークかつ重要な情報を与えてくれることは、本学会の皆様はよくご存知のことと思う。本チュートリアルでは、NMRを有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、有機太陽電池といった有機デバイスの解析に応用した例を紹介する。また、最近、分子間相互作用を考慮した化学シフトの計算が可能となってきた。GIPAWと呼ばれるこの手法の応用例に関しても紹介したい。
16:30〜18:00
寺尾 武彦 先生 (京都大学 名誉教授)
NMRはいかに創られたか: 7. フーリエ変換NMR
教科書では長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されている。しかし、その行間には先人たちの汗と涙がにじみ、フィクションを超えるドラマが潜んでいる。本講演では時代を画したNMRの方法論の研究にスポットを当て、どのような時代背景の下でどういう人物が何をきっかけに歴史的な発想を得たのか、またどんな困難に出くわしてそれをどう解決して研究を完成させたかを人間的なエソードを交えて話す。若い方々が話を通じて優れた科学者の研究に取り組む姿勢や学問に対する情熱を学んで頂ければ幸いである。今回はフーリエ変換NMRについて話す予定である。